元韓国部長判事の弁護士が直接解いてみた、大学修学能力試験模試の「遺留分」問題
初版公開 2026-05-30 / 最終検討 2026-05-30 本稿は法務法人ジョンジェ(存在)のユン・ジサン弁護士が上記YouTubeで扱った2023学年度9月模擬評価 国語領域の「遺留分」問題の解答整理に基づく一般法律情報の記事です。
私は相続事件を長く扱ってきましたが、大学修学能力試験(韓国の大学入試)模試の国語問題に「遺留分(韓国法上の留保分)」が出題されたという話を聞き、興味深く感じました。学生が試験会場で出会う遺留分の説明と、実務で日々扱う遺留分とがどこで出会い、どこで分かれるのかを確かめることは、一般読者にも遺留分制度を最も直感的に示すことができます。
問題文が説明する遺留分の出発点 — 無償処分の結果を事後に巻き戻す権利
問題文はまず、私有財産制度の原則から始めます。誰でも自分の財産を自由に処分できるという点です。ところが寄付のような無償処分が行われると、無償処分者が亡くなった後にその結果が一部覆され得ます。このとき無償処分者は被相続人となり、その権利・義務は相続人に移転します。相続人は「遺留分権」という権利を通じて、自分が受け取るべきだった最低限の取り分を取り戻せるという流れです。
相続人が被相続人の子一人だけであれば保障される比率は通常、相続できたはずの利益の2分の1です。他の子の場合も同じく2分の1が適用されます。問題文はこの部分を非常に断定的に表現しています。
遺留分算定の公式の構造
問題文に登場した算定構造を、実務の言葉で言い換えると次のとおりです。
- 基礎財産 = 相続開始当時に被相続人が保有していた財産 + 既に無償取得者に移転された財産
- 遺留分不足額 = 本人の遺留分 − 本人が既に相続または贈与で受け取った利益
- 返還請求可能範囲 = 遺留分不足額の限度内で
問題文は「遺留分権者は、自分が受け取るべきだった利益から、既に受け取った利益を引いた不足分のみを返還してもらえる」と整理しています。実務でよく使われる「特別受益は控除する」と同じ意味です。
遺留分の公式で最も誤解されやすいのは、「遺留分比率のまま返還してもらう」ではなく「本人の不足分のみを返還してもらう」という点です。同じ子でも、生前に多くの贈与を受けた子の遺留分不足額は通常少額もしくは0となります。
返還形態 — 原物返還が原則、金銭返還は例外
問題文は、無償処分された財産が金銭ではなく物や株式である場合、処分された財産そのものが返還されるのが原則だと説明しています。つまり原物返還が原則です。ただし返還が不可能であったり、遺留分権者と無償取得者が合意した場合に限り、金銭で返還できるという点も併せて整理されています。
ここで発生する現実的な帰結が「持分」です。無償取得者に返還すべき遺留分不足額が、無償処分された物の価値よりも小さい場合、遺留分権者はその物の価値に相当する金額のうち、本人の不足額が占める割合だけを持分として返還してもらうことになります。結果的に、一つの物について複数人が所有権を分け持つ構造ができあがります。
時価評価時点 — 問題文の立場と実務の微妙な違い
問題文は、遺留分不足額を計算する際、原則として相続開始当時の時価を基準とすると書いています。ただし「その物の時価上昇が無償取得者の努力により発生した場合には、無償取得当時の時価を基準に計算しなければならない」と付言しています。
実務では通常、次のように運用しています。
- 原則的には相続開始当時の時価を基準として評価します。
- 無償取得者が自身の費用・努力で価値上昇を生み出した部分(例:土地用途の変更、形質変更、大規模なインテリア工事など)は、その上昇分を除いた「元の姿」の時価で評価します。
問題文が「無償取得当時の時価で計算する」と単純化した部分と、実務が「上昇寄与分を除いた相続開始当時の時価で計算する」とする点は、結果的に近い方向ですが、表現の差があることは知っておかれてよい点です。
第10問 — 「本文の内容と一致しないもの」
私は問題文をゆっくり読み返しながら、選択肢を一つずつ検討しました。
- 「遺留分権は相続人でない者には認められない」 — 正しいです。
- 「遺留分権が保障される範囲は遺留分不足額の一部に限定される」 — 表現が微妙です。保障範囲は通常「不足額の全体」であり、「不足額の一部」ではありません。この選択肢が正解とされた理由は、「一部」という語が不足額の保障範囲を過小に表現したためと理解されます。
- 「相続人は相続開始前には無償取得者に対して遺留分権を行使できない」 — 問題文に「被相続人が亡くなれば相続が開始し、相続人らが遺留分権を行使し得る」と明記されています。正しいです。
- 「被相続人が生前に他人に売却した財産は遺留分の対象とならない」 — 無償処分ではないため正しいです。
- 「無償で取得した財産に対する権利は、無償取得者本人の意思に反して制限され得る」 — 遺留分制度の本質をそのまま表したものですので正しいです。
正解は2番です。「一部」という表現が決定的でした。
第11問 — 「本文に対する理解として最も適切なもの」
選択肢ごとに整理し直します。
- 無償処分された財産が物一個だからといって、遺留分権者がその物の全部を返還してもらうわけではありません。
- 無償処分された財産が返還される際、遺留分不足額が大きいほど無償取得者の持分は通常小さくなります。大きな不足額を満たすには返還持分が大きくなるからです。
- 物を返還できなくなった場合は、持分ではなく金銭で返還しなければなりません。
- 遺留分権者が金銭返還を要求しても、合意がなければ無償取得者は原物(物)で返還することができます。この記述が最も適切です。
- 一部返還の場合は両者ともに共有持分の構造をとるのであり、一方だけが所有権を保持し、他方が金銭のみを受け取る構造ではありません。
正解は4番です。
最後の問題 — なぜ原則として相続開始当時の時価を基準とするのか
選択肢の中に「遺留分は、被相続人が財産を無償処分しなかったと仮定して算定されるためである」という記述があります。この記述が最も適切です。遺留分制度の出発点が「無償処分がなかったとすれば相続人が受け取ったはずの利益を保障する」点にあるため、評価時点もその仮定に合わせて相続開始当時に定められるのです。
よくいただくご質問
Q. 親が兄弟の一人に不動産を贈与し、その後その不動産の時価が大きく上昇しました。どの時点の時価を基準に遺留分を判断すべきですか? A. 通常は相続開始当時の時価を基準とします。ただし価値上昇が贈与を受けた兄弟の費用・努力で生じた部分であれば、その上昇部分を除いた時価で評価する傾向があります。そのため兄弟の寄与部分と単純な時価上昇部分を区別する資料が重要です。
Q. 遺留分不足額があっても、すでに他の不動産を相続で受け取った場合は請求できないのでしょうか? A. すでに相続・贈与で受け取った利益はご本人の遺留分から控除されます。その結果、ご本人の遺留分不足額が0以下であれば、通常返還を請求できません。ですので請求の前に、ご本人が受け取った特別受益を客観的に確定しておくことが最初の段階です。
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本稿は法務法人ジョンジェ(存在)の弁護士による上記YouTube解説をもとに作成された一般法律情報の記事です。
最終検討日:2026-05-30
免責:本稿は一般的な法律情報を提供することを目的としており、個別事件の具体的事実関係に対する法律相談ではありません。類似の事案でも結果は事実関係と証拠により異なり得るため、実際の紛争や相談が必要な方は必ず専門の弁護士による個別の助言をお受けください。


