離婚財産分与で多くの依頼人が最も関心を寄せる数字は分与比率です。60対40か、50対50かをめぐって争いが起きます。しかし相談室で事件を進めていくと、結局依頼人の手元に残る金額に最も大きな影響を与えるのは分与比率ではなく分与対象資産の価格です。本稿はアパート、上場株式、非上場株式それぞれについて、どの時点・どの方法で価格が決まるか、なぜそれが分与比率より重要な変数となるかを整理します。
分与比率は弁護士の努力でどこまで動かせるか
まず率直なお話をしますと、分与比率は弁護士の努力が左右できる範囲が大きくありません。事件の基本的事実関係、婚姻期間、子育ての分担、職業と所得、資産形成時点などが比率のほぼ大部分を決めます。通常、弁護士の努力が影響を与えうる範囲は5%〜10%程度、非常にうまく運ぶ事件でも15%前後と見るのが率直な評価です。
ところが資産価格は同じ事件の中で30%以上変動する場合が少なくありません。不動産市場が上昇期にあるときは、訴訟途中にアパート一戸の値段が数億円規模で動くことが多いです。結果として依頼人が受け取る金額は分与比率より資産価格でより大きく揺れます。
分与比率を5%、10%多く取り戻そうと争う時間より、資産価格がどう評価されるか、その時点と方法を設計する時間のほうが結果をより大きく変えます。
アパート、事実審の弁論終結時点が基準となる理由
裁判所が分与対象資産の価格を評価するとき、基準となる時点は事実審の弁論終結時です。一審までで終わる場合は一審弁論終結直前時点が基準となり、控訴審まで進む場合は控訴審弁論終結直前時点が基準となります。
問題は離婚訴訟が短くても1年、長ければ2〜3年続くという点です。一審に1年半、控訴審にさらに1年半を要する事件もよくあります。その間にアパートの相場がじっと止まっているわけがありません。
現在の裁判所実務はアパートの相場をKB不動産相場基準で評価します。KB相場は毎月の動きが反映されるため、訴訟進行中の価格変動がそのまま分与結果に反映されます。最近ソウル江南圏の不動産が土地取引許可区域に指定されるなど上昇基調が急になっている時点では、一審提起時点と弁論終結時点との間に資産価値が数億ウォン差で動く事例も少なくありません。
この構造の中で、依頼人がどちらの立場にあるかによって戦略が分かれます。
- アパート相場が上がりそうで、依頼人が分与を受ける側なら、弁論終結を遅らせる方向が有利になりえます。
- 反対に依頼人が分与する側なら、弁論終結を早める方向が有利になりえます。
- 相場の流れが反対方向の場合は反対の戦略が必要です。
もちろんこのような戦略的選択は価格の流れに対する合理的予測が可能な範囲の中でのみ意味があります。市場の流れを正確に予測できる人はいません。ただし弁護士が価格変動の構造と影響力を把握しておかなければ、依頼人とともにどの線まで待ち、どこで決めるかを議論できません。
上場株式、弁論終結時の市況がそのまま反映されます
上場会社の株式は有価証券市場で価格が継続的に決まるため、事実審弁論終結時の市況がそのまま分与対象価値となります。アパートと同じ論理です。
代表的事例が崔泰源・盧素英離婚事件におけるSK株式です。控訴審弁論終結時の市況を基準に分与対象価値が算定され、その後の破棄差戻を経て差戻審の段階ではそれ以前の時点とまた異なる市況が形成されました。差戻審での基準時点が破棄差戻終結時か、それ以前の控訴審弁論終結時かは、まだ明確な判例が整理されておらず、この部分も争いが続いています。
上場株式が分与資産に大きな比重を占める事件なら、市場変動によって分与対象価値そのものが大きく揺れます。分与比率を争う前に、どの時点を基準に価格を算定するかについての法理的争いがより重要な事件となりうる場合があります。
非上場株式、評価方式の選択が結果を決めます
最も難しい資産は非上場株式です。上場株式と異なり市場価格がなく、アパートのように標準化された相場資料もありません。結局鑑定評価で価値が決まります。
最高裁判例はまず次の順序で非上場株式の価値を見ます。
- 客観的交換価値が適切に反映された正常な取引実例がある場合、その取引価格を市価として認めます。
- 正常な取引実例がない場合(個人保有の非上場株式の大部分はここに該当します)、客観性と合理性のある資料により株式価額を評価することとします。
問題はその評価方法が一つではないという点です。実務でよく活用される方式は次のとおりです。
| 評価方式 | 核心論理 | 適合する会社 | 限界 |
|---|---|---|---|
| 純資産価値法 | 企業資産から負債を差し引いた純資産 | 資産豊富な伝統的製造業 | 将来の収益可能性が未反映 |
| 割引現在価値法(DCF) | 将来キャッシュフローを現在価値に割引 | IT・スタートアップ等成長企業 | 仮定により結果の振れ幅大 |
| 相続税及び贈与税法上の補充的評価方法 | 一株当たり純損益価値・純資産価値の3:2加重平均 | 通常の非上場会社 | 実際の企業価値反映に限界 |
相続税及び贈与税法上の補充的評価方法は、一株当たり純損益価値と一株当たり純資産価値を3対2の比率で加重平均するのが原則です。ただし加重平均した価額が一株当たり純資産価値の80%より低い場合は、一株当たり純資産価値の80%を最低限とします。不動産保有比率が50%以上の不動産過多保有法人は、加重平均比率が2対3に逆転するか、純資産価値のみで評価することとされています。
最高裁はどれか一つの評価方法が常に適用されなければならないと断定できず、会社の状況と業種の特性などを総合的に考慮して公正な価額で算定するべきという立場を一貫して維持しています。
この言葉は結局、評価方式をどう選ぶかが非上場株式の価値を事実上決めるという意味です。ITスタートアップの株式を相続税法上の補充的評価方法で評価すれば実際の企業価値より遥かに低く評価される場合があり、反対に資産はほとんどないが将来の収益が大きい会社のDCF評価は非常に高く出る場合があります。
評価時点も別個の争点です
非上場株式は鑑定評価を通常一度のみ行います。その時点の価格が事実上弁論終結時の価格と同じと見られます。そのため鑑定をいつの時点で行うかがもう一つの核心変数となります。
控訴審に進んで再鑑定が行われる場合もあります。その場合は控訴審鑑定時点が基準となります。会社業績が良くなる流れなら控訴審再鑑定が評価額を高める結果につながりえますし、逆の流れなら下げる結果になりえます。
非上場株式はどの時点・どの方法で評価するかによって、同じ会社の株式が数十億ウォン差で評価されうるものです。これは分与比率を5%・10%争うこととは次元の異なる変数です。
相談室でよく見る落とし穴
離婚財産分与事件を進めながらよく見る落とし穴は二つです。
第一に、分与比率にだけ集中するあまり資産価格評価の時点と方法を遅れて検討する場合です。弁論終結を遅らせるか早めるかの決定、鑑定時点をいつに設定するかの決定が結果をより大きく変えうるのですが、依頼人が保有する資産構造をきちんと分析せず比率争いだけに時間を使う場合です。
第二に、非上場株式の評価方式に対する戦略なしに鑑定を受ける場合です。どの鑑定人が選任されるか、その鑑定人がどの方式を好むか、どの資料を提出するかによって結果が大きく異なりますが、この部分について事前検討なく一般的な手続きで進めると依頼人にとって不利な結果が出る場合があります。
私は資産比重の大きい事件ほど、事件初期に資産別の評価時点と方式のシミュレーションを併せて進めます。結果として分与比率を争う時間より、この作業に投じる時間が依頼人の手元に入る金額により大きな影響を与えます。
よくあるご質問
Q. 一審提起時点ではアパートの相場が良く見えましたが、弁論終結まで価格が下がるとどうなりますか。 A. 事実審弁論終結時の市況が基準となるため、下がった市況がそのまま分与対象価値となります。分与を受ける側なら損になり、分与する側なら利得になります。市場の流れに対する合理的予測をもとに弁論終結時点をどう持っていくか、事前に協議することが重要です。
Q. 非上場株式は無条件に相続税法上の評価方法で進めるべきですか。 A. そうではありません。最高裁はどれか一つの方式が常に適用されるべきとは見ていません。会社の業種と資産構造、収益性、取引実例の有無などにより適切な方法を総合的に判断します。どの方式が当方の事件に有利か、事件初期に分析しておく必要があります。
Q. 鑑定結果が気に入らないのですが、再度受けられますか。 A. 同一審級で同一資産について再鑑定が認められる場合は限定的です。ただし控訴審に進めば再鑑定が行われることがあり、その時点によって価値がまた変わります。一審鑑定結果をもとに控訴審での戦略をどう持っていくか別途検討が必要です。
整理にあたって
離婚財産分与の結果を分ける真の変数は分与比率ではなく分与対象資産の価格です。アパートは事実審弁論終結時のKB相場、上場株式は同時点の市場価格、非上場株式は鑑定評価結果で価格が決まり、どの時点でどの方法で評価するかが結果を左右します。事件初期に資産別の評価構造から検討しなければ、比率争いに勝っても結果として依頼人が受ける金額が減ることがあります。
作成:法務法人ジョンジェ ユン・ジサン弁護士 · 最終確認 2026-05-30
本稿は一般的な法律情報提供のためのものであり、個別事案の結果を保証するものではありません。資産評価の方法と時点は事件の事実関係により異なるため、具体的な事件は別途弁護士にご相談ください。



