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ミン・ヒジン×ハイブの仮処分決定文を、判決文に書かれたとおりに読み直します

ミン・ヒジン×ハイブの仮処分決定文を、判決文に書かれたとおりに読み直します
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ミン・ヒジン×ハイブの仮処分決定文を、判決文に書かれたとおりに読み直します

初回公開 2026-05-30 / 最終レビュー 2026-05-30 本記事は、法務法人ジョンジェのノ・ジョンオン代表弁護士による上記YouTube解説をもとに作成された一般法律情報記事です。

2024年5月30日、ADORのミン・ヒジン代表がハイブを相手に提起した議決権行使禁止仮処分が認容されました。決定直後の世論では「ミン・ヒジン代表の裏切りは事実として認められた」という解釈が急速に広がりましたが、決定文の本文を読んでみると、その解釈が正確でない部分が少なくありません。本記事は仮処分決定文の表現をそのままなぞりながら、立証責任の構造、「裏切り的行為」という表現の意味、カカオトーク資料の評価、そして本案の流れまで整理します。

仮処分で立証責任はどのように転換されたのか

裁判所が仮処分を認容するために検討する出発点は、被保全権利の存在です。一般に仮処分では申立人側が被保全権利、保全の必要性、緊急性、著しい危険などを立証しなければなりません。

本件で多くの法曹人が仮処分認容は困難と予測した理由は二つでした。

  • 代表取締役の解任は大株主の専属権限:商法上、株主総会を通じた代表取締役解任権限は大株主にあります。
  • 背任不存在の立証は申立人の役目:1回の期日で審理が終結する仮処分の性質上、ミン・ヒジン代表側が自身は背任をしていないという点まで直接立証することは事実上困難という評価がありました。

しかし決定文は立証責任を事実上転換しました。不存在の存在を立証することは現実的に不可能である点、そして株主間契約上、ハイブ側が特別な事由のない限りミン・ヒジン代表の任期を保障し、それに従って議決権を行使する義務を負う点を根拠に、背任事由の存在をハイブ側が立証すべきと判断しました。

この部分は仮処分実務において相当革新的なアプローチです。申立人がすべてを立証すべきという一般原則を、現実的・合理的理由から転換したためです。

決定文に見る第一の争点、「裏切り的行為」という表現の意味

世論で最も多く引用された表現が「裏切り的行為になり得るとしても」という一節です。この表現が「ミン・ヒジン代表の裏切りが認められた」と読まれた場合が多かったです。しかし決定文の流れは異なります。

決定文は、ミン・ヒジン代表が2023年末頃から株主間契約の修正を要求しながらADORに対するハイブの支配力を弱め、自らADORを独立的に支配できる方法を副社長などとともに模索したことは明らかに見える、と書いています。しかし続けて次のように整理しました。

  • 現在までに提出された資料のみでは、模索段階または計画樹立段階からさらに進んで具体的な実行行為をした点は疎明されない。
  • したがって、これらの行為がADORに対する裏切り的行為になり得るとしても、ADORに損害を発生させる職務に関する不正行為または法令に違反した行為に該当するとは見難い。

ここで「裏切り的行為」は刑法上の背任や法律違反の意味ではありません。信頼関係を破った行為があったという程度の事実評価です。決定文が明確に「法令に違反した行為に該当するとは見難い」と書いた理由がここにあります。

「裁判所が公認した裏切り者」という解釈は決定文の表現と距離があります。決定文は信頼関係違反程度の事実関係があったことを認めながら、同時にそれが法令違反や背任には至らなかったことを明らかにしています。

予備陰謀と実行の着手、刑事法の尺度を持ってきてみると

刑事法で予備陰謀は原則として処罰されません。特別な規定がある場合に限り処罰され、判例は予備陰謀として処罰するためにも客観的に実行行為を可能または容易にする外部的準備行為が必要としています。単なる模索段階の行為は予備陰謀にも該当しません。

本決定文に書かれた表現は「模索したことは明らかに見える」です。模索段階までだけ明らかと書きました。我が国の判例の一般的流れに従うと、この段階は予備陰謀にも該当しません。決定文が「実行の着手がなかった」という表現を使わなかった理由は、そもそも背任の可否を判断する地点に至らなかったという趣旨で読むほうが自然です。

決定文に見る第二の争点、NewJeans差別・ILLITコンセプト問題

決定文はミン・ヒジン代表が是正を要求した二つの事項についても次のように整理しました。

  • NewJeansに対する差別待遇問題は根拠がないと断定し難い。
  • ハイブの所属歌手のアルバムを押し込む問題もまた根拠がないと断定し難い。
  • ILLITに対するNewJeansコンセプト盗作イシューもまた一定部分根拠がある。

特にコンセプト盗用・盗作イシューについては、ADOR代表取締役のADORに対する忠実義務、そして専属契約に基づくNewJeans活動保障・保護義務を根拠に、ミン・ヒジン代表の問題提起が一定部分正当と見ました。もしミン・ヒジン代表がこれを知って黙認したのであれば、むしろ忠実義務違反と専属契約違反に該当し得るという流れまで示しています。

決定文に見る第三の争点、カカオトーク資料と営業秘密

本件でもう一つの核心争点はミン・ヒジン代表と副社長が交わしたカカオトーク対話の評価でした。ハイブ側はこれを通じて営業秘密が外部に流出したと主張し、弁護士たちの間では通信秘密保護法違反の可否、違法収集証拠の活用可能性などが争われました。

しかし決定文は少し異なる方向から結論を整理しました。

  • 債権者(ミン・ヒジン代表)が第三者に発送した情報がADORの営業秘密に該当すると断定し難い。
  • これを通じてADORにどのような財産上の損害が発生したかを確認する資料もない。

すなわち、仮処分裁判部は資料の違法収集可否の判断に入る前に、資料の営業秘密性自体を否定したわけです。その結果、通信秘密保護法違反などの争点は別途争う場所がなくなりました。

決定文要約を一表に

争点決定文の評価
立証責任の分配背任事由存在の立証責任がハイブ側にあると事実上転換
模索段階の行為裏切り的行為になり得るとしても法令違反または背任に該当せず
NewJeans差別・アルバム押し込み根拠がないと断定し難い
ILLITコンセプト盗作イシューミン・ヒジン代表の問題提起が一定部分正当
スタイリング費用正常な兼職許可による外注費用で背任にあらず
カカオトーク資料営業秘密性自体が否定

本案の流れ、仮処分とは異なる場所

仮処分の本案は仮処分自体の本案事件を意味しません。本件で本案とはプットオプション・コールオプション・株主間契約の効力を争う別途の手続を指します。

本案の流れは次の地点が核心です。

  • 誰が先に株主間契約に違反したか。
  • 違反の程度が本契約の目的を達成できないほど重大だったか。
  • その結果、ミン・ヒジン代表がプットオプションを行使できる地点か、ハイブがコールオプションを行使して定められた金額のみを支払えばよい地点か。

ここで一つ指摘しておくべき点があります。本仮処分決定文に現れた証拠のみを置いて見ると、ハイブ側がミン・ヒジン代表の個人的なカカオトーク資料を入手し、報道されるようにした過程が、代表取締役の私生活の自由侵害および株主間契約上の重大違反の可否の問題に発展する可能性があります。憲法上の通信の自由・私生活の自由は最も強く保護される価値の一つであり、盗聴と感受を厳格に処罰する立法者の態度がその精神を反映しています。本案でこの資料の入手・流布の経緯は別途争われる可能性が大きいです。

本件が示す示唆点

弁護士として、本決定文から二つを指摘しておきたいです。

  • 世論と決定文の距離:決定文に明示された表現と世論の解釈の間にかなりの距離があります。「裏切り的行為になり得るとしても」という表現の意味を正確に読んでこそ、事件の本質を捉えられます。
  • 本案の重み:仮処分認容がそのまま本案の結論を意味するわけではありません。ただし本件の本案は、現在現れた証拠のみを置いて見ると、ハイブ側に不利な事情がより多く見えます。新たな証拠が現れない限り、本案でハイブが優位にあると断定するのは容易ではありません。

よくあるご質問

Q. 仮処分が認容されたので本案も同じ結論が出るのですか。 A. そうではありません。仮処分と本案は異なる手続であり、本案ではより幅広い証拠調べが行われます。ただし仮処分決定文に現れた事実関係と評価が本案の流れに一定の影響を及ぼすのは一般的な流れです。

Q. ハイブは本案でカカオトーク資料を再活用できますか。 A. 本案ではより多様な証拠が検討されますが、本仮処分決定文で営業秘密性自体が否定されたため、その資料の活用には追加立証が必要です。通信秘密保護関連の違法収集証拠争点も本案ではより本格的に争われる可能性が大きいです。

Q. 株主間契約のプット・コールオプションはどう作動しますか。 A. 一般に株主間契約では特定の違反事由発生時に一方がプットオプションを行使して相手方に一定価格で売却できるよう定めたり、逆にコールオプションを行使して一方の持分を定められた価格で買い受けられるよう定める形があります。本件は両側が異なるオプション行使を検討する構造で本案が流れます。

本決定文が一般読者に与える教訓

本件は結局、決定文を直接読むことの価値を示します。世論で急速に形成される断定的表現よりも、決定文のワーディング一つひとつを正確に読むほうが事件の本質に近いです。本記事が決定文の読み方の参照点となれば幸いです。

本件または類似の仮処分・株主間契約紛争について短く整理してみたい方は今すぐチャットで相談するもご利用いただけます。


ノ・ジョンオン代表弁護士 / 法務法人ジョンジェ 家事・相続専門弁護人団 最終レビュー 2026-05-30

本記事は一般法律情報であり、個別事案に対する法律相談に代わるものではありません。事案により結果が変わり得ますので、具体的紛争のある方は別途のご相談をお勧めします。