不貞の証拠を掴んでも慰謝料が0円になった理由、除斥期間という見えない壁
初回公開 2026-05-30 / 最終確認 2026-05-30 本稿は法務法人ジョンジェのノ・ジョンオン代表弁護士・ユン・ジサン弁護士の上記YouTube解説をもとに作成された一般的な法律情報です。
不貞の証拠を確保していても、慰謝料が0円で終わる事例があります。議政府地方法院2023ドゥダン6216事件がその一例です。夫側はカカオトークやドライブレコーダー映像など比較的強い証拠を持って慰謝料を請求しましたが、裁判所は慰謝料請求をすべて棄却しました。理由は二つです。証拠が不貞行為として認められるには不十分との評価、そして決定的に除斥期間が経過しているとの判断です。本稿はこの判決を整理しつつ、家事事件の除斥期間がなぜそれほど決定的なのかを弁護士の視点から説明します。
事実関係、双方が離婚を請求した事件
本件は原告(妻)と被告(夫)が双方で離婚を請求した事案です。裁判所は夫婦の婚姻関係が回復不可能な程度に破綻したと見て、離婚自体は認容しました。ただし双方が請求した慰謝料と財産分与の結論は分かれました。
特に夫は妻が送信した文字(例:精一杯浮気するわ、私には男が必要、などの表現)や他の男性と接触する様子が写ったドライブレコーダー映像を証拠として提出し、妻の不貞行為を主張して慰謝料を請求しました。一般的な直感では、これくらいなら慰謝料が認められるだろうと思える事案です。
慰謝料請求が棄却された理由、二つ
裁判所が夫の慰謝料請求を棄却した理由は二つに整理されます。
- 証拠の限界:当該カカオトーク・ドラレコ証拠のみでは、婚姻破綻の主要原因となった不貞行為として認めるには不十分と判断しました。
- 除斥期間の経過:仮に不貞行為と認められても、夫がその事実を知った日(2021年)から6か月を大きく超過した2024年に反訴を提起しており、慰謝料請求権はすでに消滅しているとしました。民法第841条に基づく判断です。
本件で決定的なのは二つ目です。証拠の限界は事件ごとに争う余地がありますが、除斥期間の経過はもはや争う余地を残しません。
除斥期間という見えない壁
家事事件において除斥期間はよく見落とされる箇所です。韓国民法第841条は不貞行為による離婚請求権について、不貞があったことを知った日から6か月、行為があった日から2年が経過すれば請求できないと定めています。
この規定のポイントは二つです。第一に、起算点が「知った日」であるという点です。疑った日や情況を把握した日ではなく、不貞行為の事実を知った日です。第二に、6か月という期間が非常に短いという点です。本人の感情整理、家族関係の整理、証拠収集を全て済ませて訴えを提起するには、6か月は決して長い時間ではありません。
本件で夫は2021年に不貞の事実を知りながら、2024年にようやく反訴で慰謝料を請求しました。その結果、慰謝料請求権は消滅し、証拠の強弱を争うところに至る前に請求は棄却されました。
ご相談の場では、依頼者が不貞の証拠を持って来られる時点で既に除斥期間が逼迫しているか経過している場合が少なくありません。衝撃を受けた時点から弁護士に会う時点までの空白が6か月を超えていることが多いためです。この空白が慰謝料の運命を決めます。
財産分与は別途進行しました
慰謝料請求が棄却されても、財産分与は別の基準で整理されます。本件の財産分与部分は次のように整理されます。
- 夫婦共同生活のため発生したマンション分譲関連債務4,350万ウォンを夫婦共同債務として認定。
- 妻がそのうち50%の約2,175万ウォンを夫に支払うよう判決。
ここで押さえるべき点は、慰謝料と財産分与が別の基準で評価されるということです。不貞をめぐる争いがあっても、夫婦共同債務は共同債務として、夫婦共同財産は共同財産としてそのまま評価され分割されます。
事件の流れを一表に
| 争点 | 結論 | 根拠 |
|---|---|---|
| 離婚自体 | 認容 | 婚姻関係回復不可能な程度に破綻 |
| 夫側慰謝料 | 棄却 | 1) 証拠が不貞認定に不十分、2) 除斥期間経過(民法第841条) |
| 財産分与 | 共同債務4,350万ウォン認定 | 50%分担 → 妻が夫に2,175万ウォン支払 |
弁護士の立場から見た本判決の示唆
私はこの判決の示唆は三つあると見ています。
- 証拠の強弱より時点が先です:どれほど強い証拠があっても、除斥期間が過ぎた後では請求権自体が消えます。慰謝料の運命は時点管理から始まります。
- 慰謝料と財産分与は基準が異なります:慰謝料が棄却されても財産分与が一緒に崩れるわけではありません。両項目は別途整理されます。
- カカオトーク・ドラレコ証拠だけでは不貞認定が保証されません:疑いの状況と不貞の事実の差は、通常少なくない距離です。証拠が何を立証するかを正確に整理しておく必要があります。
依頼者の悔しい気持ちには十分共感します。ただ、その気持ちが法的権利を代わりに守ってはくれません。弁護士が依頼者と初めて会う席で最初に問うのが「いつお知りになりましたか」である理由はここにあります。
よくあるご質問
Q. 不貞の事実を正確に知った日がいつかを争えますか? A. 争えます。「知った日」の認定時点は事実関係によって異なります。単なる疑いではなく不貞行為の事実自体を知った時点が起算点です。ただしその時点がいつかについての立証責任は請求者が負うため、カカオトーク・文字・メモなど時点が確認できる資料が併せて必要です。
Q. 除斥期間の6か月が過ぎたら永遠に慰謝料はもらえませんか? A. 不貞が継続中であれば争う余地があります。本件と別個に、不貞が単発でなく継続している場合は、直近の不貞行為がどこまで認められるかによって時点が異なる形で評価され得ます。
Q. 慰謝料請求を逃したら、財産分与でより多くもらえますか? A. 直接補填されるわけではありません。慰謝料と財産分与は基準が異なるため、慰謝料を逃したからといって財産分与の比率が自動的に加算されるわけではありません。ただし事案の全般的事情を通じて寄与度評価に影響を及ぼし得ます。
ご自身の事案にどう適用するか
ご自身が不貞をめぐる争いを控えている場合、次の順序で整理されたほうが安全です。第一に、不貞行為の事実を知った時点がいつかを正確に整理します。6か月の時点が残っているかをまず見ます。第二に、その時点を立証できる資料(カカオトーク・文字・メモ・録音など)を併せて整理します。第三に、不貞行為自体を立証する資料の性格を評価します。疑いの状況なのか、不貞の事実自体なのかの差が決定的です。
ご自身の事件の時点・証拠構造をまず整理されたい場合は今すぐチャットで相談するも可能です。
ノ・ジョンオン代表弁護士 / ユン・ジサン弁護士 / 法務法人ジョンジェ 家事・相続専門弁護人団 最終確認 2026-05-30
本稿は一般的な法律情報であり、個別案件の法律相談を代替するものではありません。事案により結果が異なり得ますので、具体的な紛争がある場合は別途のご相談をお勧めします。



