離婚・慰謝料事件において相姦者に対する慰謝料は、通常最も感情的に迫る請求です。ところが2024年7月15日、韓国最高裁は夫婦間の慰謝料が0円に整理されると、相姦者に対する慰謝料も認められないという趣旨の判決を出し、実務に大きな波紋を生みました。本日はこの判例の論理と、今後離婚・相姦訴訟を準備される方が必ず知っておくべき落とし穴を整理します。
事件の構造 — 双方有責の典型的シナリオ
典型的なシナリオはこうです。
- 夫がギャンブル中毒・暴言・暴力などで婚姻生活に大きな落ち度を犯す
- その最中に妻が不貞行為を行う
- 夫が離婚を請求しつつ妻に慰謝料、相姦男に損害賠償を併せて請求する
このような場合、裁判所は通常双方の責任がいずれも大きいと見て慰謝料を認めないことが多いです。
従来の実務 — 双方有責でも相姦者には別途請求
過去には離婚慰謝料が0で整理されても、相姦者に対する損害賠償は別途認められる場合が多くありました。通常、家庭破綻にとにかく責任があるという論理で3,000万ウォンから5,000万ウォン程度の損害賠償が認定されていました。物価上昇に比して不十分との批判はありましたが、ともかく請求は可能な構造でした。
2024年最高裁判例 — 論理が変わった
最高裁は本判決で次のように整理しました。
婚姻破綻責任に基づく慰謝料請求は、自身の配偶者の帰責事由と、その帰責事由に基づく配偶者に対する慰謝料が前提となる。双方に責任があり慰謝料が0となった以上、相姦者にも慰謝料は認められない。
表面的な論理は単純です。
- 主犯(配偶者)の慰謝料責任が認められなければならない
- そうしてはじめて共犯(相姦者)の慰謝料責任も認められ得る
- 主犯の責任が0であれば共犯の責任も0
刑事の比喩 — 主犯と幇助犯
最高裁の思考は刑事事件の主犯・幇助犯構造と似ています。主犯が処罰されないのに幇助犯だけが処罰されることはほぼありません。この論理を家事・民事の慰謝料に移すと、配偶者が責任を負わないのに相姦者だけが責任を負う結果は論理的に不自然との結論になります。
しかし実務的・情緒的な違和感
法理的整合性は明白ですが、市民感情との距離も明白です。
- 家庭があると知りつつ関係を持った相手の責任が0になる
- 結果的に相姦者に責任を問いたいという感情的要求が頓挫する
- 通常「双方有責」という表現自体が無罪・免責と誤解されることもある
この部分は社会的合意・立法論議がさらに必要な領域です。
どう備えるか — 離婚訴訟戦略の側面
本判例以降、通常離婚・相姦訴訟を準備される方は次の事項を点検する必要があります。
- 双方有責と評価される危険があるかの事前分析
- ご自身の帰責事由(暴言・暴力・ギャンブル・消費等)に関する客観的資料整理
- 相手方帰責事由(不貞・家庭放置等)に関する立証資料収集
- 慰謝料が0となる危険がある場合、財産分与・養育費等の比重を調整する戦略の検討
特にご自身の帰責が大きい場合は、相姦者に対する別途請求だけを当てにして進めるのではなく、事件全体の構図を組み直す必要があります。
よく聞かれる誤解 — 不貞は無条件で慰謝料
ご相談の場では「不貞があったので無条件に慰謝料を受け取れる」と断定される方が多いです。しかし実際の判決は次のような事情を総合評価します。
- 婚姻破綻時点と不貞時点の前後関係
- ご自身側の帰責の程度
- 不貞事実に対する客観的証拠の強さ
- 子・財産など家族全体に及ぼした影響
不貞事実そのものよりも、誰がどの時点から家庭破綻により大きな責任を負ったかが核心です。
面会・財産分与に与える影響
慰謝料が0になるからといってすべての請求が塞がるわけではありません。
- 財産分与:通常寄与度基準で別途算定。不貞が分与比率に直接影響する場合は限定的
- 養育費:両親双方の所得・財産基準で算定。不貞自体は養育費算定に大きく影響しない
- 親権・養育権:子の福利基準。不貞が直ちに養育者の不適格につながるわけではない
立証資料 — 何が決定的か
- 不貞時点・期間を立証する客観的資料
- ご自身の帰責の開始時点
- 家庭破綻時点の同居・別居状況
- 相互の消費・財産状況の変化
ご相談の場で私は通常、時系列で事件を再整理することをお勧めします。責任の「重心」がどこにあるかが通常結果を決めます。
事件戦略再構成の例
- ご自身の帰責が大きい場合:慰謝料請求の比重を下げ財産分与・養育費に集中
- 相手の帰責が大きい場合:慰謝料と相姦者請求を結合する従来戦略を維持
- 双方とも帰責が大きい場合:調停・合意による手続短縮を検討
FAQ
Q. ご自身にも落ち度があれば相姦者慰謝料は無条件で0ですか?
A. 通常ご自身側の帰責が婚姻破綻に同程度寄与したと評価され慰謝料が0となった場合に限り、相姦者慰謝料も0になります。事実関係により結果は異なります。
Q. では不貞の証拠を収集することは意味がなくなったのですか?
A. そうではありません。不貞の証拠は慰謝料のみならず、親権・養育権判断、財産分与寄与度評価で依然重要な資料となります。
締めくくり
2024年最高裁判例は不貞事件の定義に大きな変化を生みました。ご自身の帰責事由が大きければ、相姦者慰謝料という安全網も消え得ます。離婚・相姦訴訟を準備される方は感情に流される前に、ご自身の事件が双方有責と評価される危険があるかからまず検討されることをお勧めします。事件全体の構図を組み直す必要があるかもしれません。
立法論議 — 社会的感覚の変化は別の道を行くか
本判例は法理的整合性の次元では整った結論ですが、不貞行為に対する社会的責任意識をそのまま反映しているわけではありません。一部からは家庭保護と貞操義務という社会的価値を別途立法的に保護しようという議論も通常提起されます。ただし立法段階にはさらに時間が必要で、その間進行する事件には現行判例が適用される点を前提に置く必要があります。
ご自身の帰責の「客観化」が最も重要
ご相談の場で私は通常、ご自身の帰責の立証を最も慎重に見ます。ご自身が認める落ち度の程度、相手が主張する程度、その間の距離を客観資料で縮める作業が通常事件の出発点です。日記・文字・口座取引・治療記録など通常様々な資料を段階的に整理すれば「双方有責」評価の危険を減らせます。
財産分与における加算・減算事由
不貞自体が財産分与比率に直接適用される場合は通常限定的ですが、不貞に紐づく資産流出(相手方への送金・贈与等)は通常分与寄与度評価でマイナスに作用し得ます。この部分は慰謝料が0となった場合でも通常生きている請求です。
養育・面会側面の実務ポイント
- 子の前での不貞露出の状況は通常養育環境評価に影響を与える
- 面会交流時に子に否定的影響を与える行為は通常面会条件に反映される
- 不貞とは別個に、子の日常スケジュールを継続的に維持した養育親の安定性が通常より重く評価される
事件進行段階別チェック
- 訴状作成前:ご自身の帰責資料整理・予測
- 弁論段階:時系列整理・証人尋問戦略
- 調停段階:「慰謝料0」危険を考慮した合意条件検討
- 判決以降:強制執行・財産照会の同時進行
一行結論
不貞事件で慰謝料はもはや安全網ではありません。ご自身の帰責の客観化と事件全体構図の再設計が通常最大の差を作ります。
依頼者資料準備のためのメモ
私は相談前に通常以下の資料を整理してきていただくよう案内します。家族日程・諍い履歴の時系列整理、ご自身・相手方の所得・支出資料、子の学校・治療日程、不貞疑惑情況の日別メモ。これらの資料が整理されていれば、初回相談で慰謝料評価の危険区間を通常素早く見極められます。
初回相談で資料がよく整理されていれば、通常事件全体の時間が短縮されます。
バイライン · 作成・検討:ノ・ジョンオン弁護士 · 検討日:2026-05-30
本稿は一般的な情報提供を目的としたコラムであり、個別事件の結果を保証しません。具体的な事実関係により結論が異なり得ますので、個人の事情に合った法的助言が必要な場合は弁護士相談をお勧めします。



