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認知症が始まった親の遺言と贈与、裁判所はどこまで認めるのか

認知症が始まった親の遺言と贈与、裁判所はどこまで認めるのか
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認知症が始まった親の遺言と贈与、裁判所はどこまで認めるのか

初回公開 2026-05-30 / 最終レビュー 2026-05-30 本記事は、法務法人ジョンジェのユン・ジサン弁護士による上記YouTube解説をもとに作成された一般法律情報記事です。

相続紛争で頻繁に争点となる場面があります。被相続人が生前に行った遺言や贈与が、本当にその時点の本人の意思に基づくものだったのかという問題です。「意識ははっきりしていた」とする家族の証言と、「その時点ですでに認知症がかなり進行していた」とする家族の証言が真っ向から対立するケースは少なくありません。本記事では、遺言能力・贈与能力の意味、認知症の段階ごとの判断の流れ、そして家族が事前に備えておける客観的資料を整理します。

法律行為の効力は結局のところ意思能力から出発します

成人が契約を締結した場合、その効力は通常認められます。本人がその契約の意味を理解し、決定できる能力、すなわち意思能力がある状態で契約をしたものと評価されるためです。

遺言と贈与も本質は同じです。本人がその遺言や贈与の意味を理解し、その結果として生じる権利関係の変動を判断できる状態で行ったものであれば効力が認められます。その能力が弱まった状態で行ったり、その能力が事実上ない状態で行った場合には、効力が争われます。

この場面は相続事件で頻繁に揺れます。遺言や贈与をなさる方は通常高齢で、身体的・精神的な制約のある状態で進行することが多いためです。

認知症の段階と遺言能力・贈与能力の一般的な流れ

認知症は一つの尺度だけで段階を分けるものではありません。ただ、臨床で頻繁に用いられる尺度を基準に一般的な流れを整理すると次のとおりです。

段階一般的評価備考
認知症なし・前認知症通常、遺言・贈与能力認める特段の問題は少ない
初期認知症通常、能力認める具体的事案の事情により争いあり
中期認知症事案により争い大きい認定・否定いずれも可能
末期・高度認知症通常、能力否定大部分の効力争いで否定

脳出血のような疾患性の要因で発症した認知症は、治療結果によっては改善する場合がありますが、加齢に伴う認知症はほとんど改善しません。したがって、時間が経つほど能力は徐々に弱まる流れで進行するのが一般的です。

臨床で頻繁に活用される検査尺度

裁判所で能力争いが本格化すると、大学病院など大病院の神経内科専門医による評価が事実上最も重要です。ただし、依頼者側でも事前に知っておける検査尺度がいくつかあります。

  • K-MMSE(韓国版簡易精神状態検査):30点満点。点数が高いほど正常に近いです。通常15点以下であれば重度と評価され、この領域では遺言・贈与能力が問題となり得ます。
  • CDR(臨床認知症評価尺度):0点から始まり0.5、1、2、3まで段階があります。点数が低いほど正常に近いです。2点以上は通常重度段階と評価されます。
  • GDS(全般的退化尺度):1点から7点まで。点数が高いほど状態の悪い段階です。1〜3点は初期または軽度認知症、4点以降から通常重度認知症と評価されます。

ただし、これらの尺度は簡易評価ツールです。実際の能力判断は評価点数だけで行われるのではなく、患者の日常行動、医療スタッフの臨床観察、処方薬の種類、合併疾患などを総合して行われます。

相談室で見ていると、お子さんたちが「あの時は意識ははっきりしていた」と述べる証言と、カルテ上の重度段階評価とがぶつかるケースは少なくありません。客観的資料が明確であれば一貫した結論に至りますが、資料が不足すると争いの幅は非常に広がります。

家族が事前に備えておける客観的資料

ご両親が遺言や贈与をなさろうとする時点で、お子さまとして一緒に整えておける客観的資料があります。

  • 専門医の事前診断書:遺言や贈与の直前に神経内科専門医の評価を受け、遺言・贈与能力がある状態であることが確認された診断書。
  • 遺言公正証書:公証人の前で本人の陳述を通じて遺言が行われるため、その時点の意思能力に対する客観的証拠価値が大きいです。
  • 遺言代用信託:信託設計の過程で本人の意思が段階的に確認され文書化されるため、死後の紛争を減らせる構造です。
  • 映像記録:遺言書作成または贈与合意時点の本人陳述の映像が客観資料として活用され得ます。

遺言能力と贈与能力は死後・生前という点で争いの様相が異なります

二つの能力は本質的には同じ尺度で評価されますが、争いが本格化する時点に違いがあります。

  • 贈与能力:本人が生存中に争いが始まり得ます。本人が直接意思を表示でき、検査結果を活用できる領域です。
  • 遺言能力:本人の死後に争いが本格化するケースが多いです。死後は本人の陳述を聞けないため、その時点の客観的資料が決定的に重要となります。

特に認知症を患ってこられた方の遺言が争いの対象になるケースは通常多いです。進行段階のどの時点で遺言が行われたか、その時点の評価資料が何かが結果を左右します。

事例で見る流れ

相談室で頻繁に見る事例は二つの流れに整理されます。

第一の流れは初期認知症診断後の遺言公正証書です。ご両親が初期認知症と診断された時点で、お子さまの勧めで遺言公正証書を作成しておくケースです。このとき神経内科専門医の診断書を一緒に備えておくと、死後の遺言能力争いで非常に強い証拠となります。

第二の流れは中期認知症時点の贈与と、死後の無効主張です。一部のお子さまに不動産名義が移転された事実が死後に明らかになり、他のお子さまたちがその時点のご両親の状態からして贈与能力がなかったと主張するケースです。この事案では神経内科のカルテ、薬の処方履歴、日常介護記録、近隣医療機関の診療履歴などを総合分析して能力評価を争うことになります。

よくあるご質問

Q. 初期認知症と診断された方が作成した遺言は無条件に有効ですか。 A. 通常有効と評価される流れです。ただし本人の日常行動、検査点数、処方薬などを総合し事案ごとに争いの余地があります。初期認知症という診断だけで自動的に有効となるわけではありません。

Q. 中期認知症時点の贈与は無効と認められますか。 A. 事案によります。中期認知症の領域は認定と否定の両方が可能な領域であり、だからこそ評価資料が決定的です。本人がその時点で不動産を誰に移転するかという程度の判断ができたか、その判断の結果を理解していたかを総合的に評価します。

Q. 死後に遺言能力を争える資料はどこから確保しますか。 A. 神経内科の診療カルテ、処方薬履歴、近隣病院の診療記録、入院・外来記録、介護施設の日常介護記録などが核心資料です。弁護士が依頼を受けると、医療機関ごとに資料確保の手続を進めます。

ご家庭にどう適用するか

ご両親が高齢で遺言や贈与を検討されている状況であれば、以下の順序で点検しておくのが安全です。

  • 現在のご両親の認知状態はどの段階か。検査結果はあるか。
  • 遺言公正証書・遺言代用信託など客観的資料が一緒に残る形で進められるか。
  • 家族内の他の構成員の同意または認知はどこまで整理されているか。
  • その時点の医療資料を事前に保全しておく必要があるか。

ご家庭の遺言・贈与構造を一度整理してみたい方は今すぐチャットで相談するもご利用いただけます。


ユン・ジサン弁護士 / 法務法人ジョンジェ 家事・相続専門弁護人団 最終レビュー 2026-05-30

本記事は一般法律情報であり、個別事案に対する法律相談に代わるものではありません。事案により結果が変わり得ますので、具体的紛争のある方は別途のご相談をお勧めします。