不貞をした夫の離婚請求は棄却されたが、財産はなぜ50対50に分けられたのか
初回公開 2026-05-30 / 最終確認 2026-05-30 本記事は法務法人 存在 家事相続チームの上記YouTube解説をもとに作成した一般的な法律情報です。
40年連れ添った夫婦の離婚事件がありました。夫は10年以上他の女性と同居し、婚外子まで設け、裁判所は夫の離婚請求を棄却し、慰謝料3,000万ウォンを認めました。ところが財産は50対50に分け、夫の退職年金約2億9,000万ウォンまで分割対象に含めました。同じ事件で、一方では「あなたが責任者だ」とし、他方では「半分は持って行きなさい」と言った格好です。本記事では水原家庭裁判所・水原高等法院のこの判決(2019デハプ9931、2020レハプ11470)を整理しながら、有責主義と寄与度分割の関係、財産分与の基準時、そして夫婦が作成した約定書の限界を併せて見ます。
事実関係、40年の婚姻と10年以上にわたる不貞
本件の夫婦は1974年に結婚し、40年近い婚姻生活を続けてきました。夫は教師として収入活動を行い、妻は家事と育児を担ってきました。やがて夫が10年以上にわたり他の女性と同居し、婚外子まで設けていた事実が発覚し、2013年11月頃に夫婦の婚姻関係は実質的に破綻に至ります。
以後別居が続き、別居期間中に夫婦は財産分与約定書を作成しました。しかし約定の前提となっていた協議離婚が成立せず、約定の効力が争われ、最終的に双方が離婚請求をする形で裁判が進行します。
離婚請求はなぜ一方だけが認められたのか
裁判所は夫の不貞行為と遺棄を婚姻破綻の主たる責任と見て、妻の離婚請求は認容し、夫の離婚請求は棄却しました。これが韓国法の有責主義原則です。
有責主義とは、婚姻関係破綻に主たる責任のある配偶者は自己の責任で作った破綻を理由に離婚を請求することができないという原則です。ただし例外もあり、相手方がむしろ離婚を望まず報復目的で拒否する場合など、一定の事情が認められれば有責配偶者の離婚請求が認められることもあります。本件はそうした例外事情が認められなかった事案です。
夫は妻がすでに以前に許しており慰謝料の時効も経過したと主張しましたが、裁判所は不貞行為が継続中である点を認めて、全て採用しませんでした。
慰謝料3,000万ウォンはどのような意味か
慰謝料3,000万ウォンは有責行為に対する精神的損害賠償です。財産分与とは法的性格が完全に異なる項目です。
相談室で見ると、不貞事件で依頼者は「この人には一銭も渡してはならない」という強い認識を持っていらっしゃいます。しかし裁判所は有責行為に対する責任は慰謝料で精算し、財産は寄与度という別の物差しで評価します。二つを同じ物差しと誤解すれば事件戦略がずれます。
財産分与はなぜ50対50になったのか
争点は次のように整理されます。
- 一審: 過去の別居期に作成された夫婦間の約定などを考慮し、妻70%、夫30%で分割。
- 控訴審: 約34年の長期婚姻に着目し、婚姻破綻の責任は慰謝料で既に精算されているのだから、財産分与は夫の所得寄与と妻の家事・育児寄与を同等に見るべきだという原則を適用して50対50と認定。
私はこの判断の意味は二つあると見ます。第一に、有責事由は慰謝料で精算し、財産分与は寄与度で分離するという原則がそのまま適用された点です。第二に、長期婚姻において家事・育児に専念した配偶者の寄与を単なる補助的寄与ではなく、対等な寄与として評価した点です。
長期の婚姻で家事・育児に専念した配偶者の寄与は通常、対等な比重で評価される傾向があります。本件はその傾向が実際の判決として現れた事例です。
夫婦が作成した財産分与約定書はなぜ効力がなかったのか
本件で夫婦は別居中に財産分与約定書を作成しました。一審はその約定などを一定程度反映して70対30の比率を認めましたが、控訴審は約定の効力自体を改めて検討しました。
裁判所は協議離婚を前提とした約定はその協議離婚が成立しなければ効力がないと明確に判断しました。協議離婚が頓挫し裁判離婚に進めば、その約定書は法的に無効となり、財産分与は再び裁判所の判断を受けることになります。
この部分は別居中に合意書を作成される方が最もよく誤解される点です。「これだけは私の取り分でこれだけはあなたの取り分」と書いておいたから終わったのではないかという認識と異なり、協議離婚という前提条件が満たされなければ、その約定は生きていない可能性があります。
退職年金はどのように分割対象に入ったのか
本件で最終分割額を大きく変えたもう一つの要因は夫の退職年金です。
- 一審: 別居直後に夫が受け取った退職年金約2億9,000万ウォンは分割対象から除外。
- 控訴審: 同じ退職年金を長期間の結婚生活を通じて形成された共同財産と見て分割対象に含めた。
結局、全体純財産は約10億7,000万ウォン台に増え、これを50対50で分けた結果、妻が現在保有する財産が夫の取り分より多い構造となりました。そのため裁判所は原告(妻)が被告(夫)に財産分与金約5,300万ウォンを支払えという結論に至りました。
本件の争点を一表で
| 争点 | 一審 | 控訴審 |
|---|---|---|
| 夫の離婚請求 | 棄却 | 棄却 |
| 妻の離婚請求 | 認容 | 認容 |
| 慰謝料 | 3,000万ウォン認定 | そのまま維持 |
| 分割比率 | 妻70:夫30 | 妻50:夫50 |
| 退職年金(約2.9億) | 分割対象から除外 | 分割対象に含む |
| 夫婦作成の約定書 | 一部反映 | 協議離婚前提条件の不成就で無効 |
| 最終結果 | (現在保有での分割) | 妻が夫に約5,300万ウォン支給 |
本判決が示す示唆点
相談室で見ると、このような事件が示す示唆点は結局三つに集約されます。
- 有責と財産分与は別の物差しで評価されます: 責任のある配偶者でも財産形成への正当な寄与があれば、その寄与は保護されます。不貞などの有責事由は慰謝料で処理し、財産分与は寄与度で処理します。
- 長期婚姻における家事・育児寄与は対等に評価される傾向が強いです: 30〜40年の婚姻では家事・育児に専念した配偶者の寄与は単なる補助的寄与として評価されません。
- 夫婦間の約定書は前提条件を併せて見なければなりません: 協議離婚を前提とした約定は協議離婚が頓挫すれば効力が失われる場合があります。別居中に作成した約定書がある場合、その約定がどのような条件の上に立っているかを併せて確認すべきです。
よくあるご質問
Q. 不貞をした配偶者でも財産分与を受けられますか? A. 受けられます。不貞は慰謝料で精算され、財産分与は別途の寄与度評価で行われます。不貞があっても財産形成・維持への寄与があれば、その寄与は財産分与に反映されます。
Q. 別居中に作成した夫婦間の約定書はそのまま効力がありますか? A. 無条件に効力があるわけではありません。約定の前提条件が何かを併せて見る必要があります。協議離婚を前提とした約定は協議離婚が頓挫すれば効力が失われる可能性があり、結局は再び裁判所の判断を受けます。
Q. 退職年金は常に分割対象になりますか? A. 本判決のように婚姻期間中に形成された部分は分割対象と評価される傾向があります。ただし受領時点、別居時点との関係、婚姻期間中の寄与分などを併せて検討する必要があります。本件でも一審と控訴審の結論が分かれた項目です。
ご自身の事件にどう適用すべきか
不貞が争点となった離婚事件に置かれている場合、次の順序で整理されるのが良いでしょう。第一に、有責事由とそれに伴う慰謝料評価がどこまでなのかを別途整理します。第二に、財産項目別に形成時点とご自身の寄与形態を整理し、分割対象と分割比率評価に備えます。第三に、別居期間中に作成した合意書・覚書・財産整理表があれば、その前提条件が何かを併せて検討します。
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法務法人 存在 家事・相続チーム 最終確認 2026-05-30
本記事は一般的な法律情報であり、個別事案に対する法律相談に代わるものではありません。事案により結果が異なりますので、具体的な紛争がある場合は別途相談をお勧めします。



